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Wi-Fi ブートツール（ap_start / wifi_or_ap）

これらのスクリプトは、起動後に 既知Wi-Fiへ接続を試み、失敗時は APモードへフォールバックするためのツール群。

関連スクリプト

  • wifi_or_ap … 接続試行→失敗ならAP起動の判断ロジック
  • ap_start … AP（hostapd/dnsmasq）起動ヘルパー

wifi_or_ap

このスクリプトは、起動時にシステムサービス wifi-or-ap.service （oneshot／タイマーにより起動後30s＋5分間隔）から実行されます。 ブート時に Wi-Fi(STA) 接続を試行し、失敗したら AP モード を起動します。
既に疎通（PING_TARGET への ping 成功）が確認できる場合は 早期終了。
AP モード移行後は 一定時間の再試行抑制（/run/ap_hold）でフラップを防止します。DHCP は systemd-networkd に委任。

変数

種別 変数名 例 / 既定 説明
任意 AP_HOLD_DURATION 300 AP 移行後、STA 再試行を抑制する秒数（/run/ap_hold）
任意 PING_TARGET 8.8.8.8 早期疎通確認の宛先（成功なら即終了）

STA 設定ファイルの場所

/etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant-<iface>.conf を参照します（例: wlanUSB, wlanINT）。ファイルが無ければ AP へフォールバック。

処理の流れ

1) 早期疎通チェック：PING_TARGET に 1 発 ping→成功なら 即終了。

2) 必須変数の検証：未定義があれば エラー終了。

3) AP ホールド確認：/run/ap_hold があれば STA 試行スキップ。

4) ログ開始：WIFI_OR_AP_LOG に開始行を追記。

5) STA IF 優先度決定：BOARD_TYPE により STA_IF_ORDER 設定（Jetson は ["wlanINT"]）。

6) per-IF conf 存在確認：/etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant-<iface>.conf が 1 つも無ければ AP 起動→終了。

7) 物理 IF 出現待ち：短時間待機して検出できなければ AP 起動。

8) 競合排除：pkill wpa_supplicant、古いソケット削除、hostapd/dnsmasq 停止。

9) IF 準備：各 STA IF を ip addr flush → ip link set up。

10) wpa_supplicant 起動：systemctl start wpa_supplicant@<iface>（優先度順）→WIFI_CONNECT_SLEEP 待機。

11) 接続完了待ち：wpa_cli status の wpa_state=COMPLETED をタイムアウトまでポーリング。未達なら AP 起動＋/run/ap_hold 設置。

12) DHCP は networkd に委任（処理なし）。

13) 経路/ゲートウェイ検証：ip route get <gw> と GW への ping を再試行。成功→hostapd/dnsmasq 停止・/run/ap_hold 削除・networkctl reconfigure/renew、失敗→ AP 起動＋/run/ap_hold。

ネットワークマネージャの競合

本フローは systemd-networkd 前提 です。NetworkManager 等と併用すると競合します。
片方に統一し、重複する DHCP/IF 管理を無効化してください。

AP ホールド（/run/ap_hold）

AP へフォールバックすると /run/ap_hold を作成し、AP_HOLD_DURATION 秒 STA 再試行を抑制します。
不安定な電波環境での 状態フラップ防止 に有効です。

IF 優先度（STA_IF_ORDER）の調整

既定は ["wlanUSB","wlanINT"]（Jetson は ["wlanINT"]）。運用に合わせて 優先インターフェース を入れ替えてください。

外部疎通チェックは任意

8.8.8.8 への外部 ping はコメントアウト済みです。要件が LAN 到達性のみ なら GW の疎通確認だけで十分です。

ap_start

このスクリプトは、wifi-or-ap で APモード へフォールバック時に呼び出されます。 指定インターフェースに 静的 IP を割り当て、dnsmasq(DHCP) と hostapd(AP) を起動してアクセスポイントを立ち上げます。

処理の流れ

1) IF 出現待ち：ip link show "$AP_INTERFACE" が成功するまで待機。

2) IF を up：ip link set "$AP_INTERFACE" up。

3) 静的 IP 割当：既存 IP を flush → ip addr add "$AP_STATIC_IP" dev "$AP_INTERFACE"。

4) dnsmasq 起動：systemctl unmask/enable/start "$DNSMASQ_SERVICE"。

5) hostapd 起動：systemctl unmask/enable/start "$HOSTAPD_SERVICE"。

6) 完了ログ：起動成功を "$AP_START_LOG_FILE" に記録。

規制・レギュレーション（country_code）

hostapd.conf に country_code=JP（運用国コード） を必ず設定してください。
不適切な国コードは 5 GHz 帯の起動失敗や法令違反につながります（DFS/チャネル制限にも影響）。

IP 設計の整合性

AP_STATIC_IP と dnsmasq の dhcp-range は 同一セグメントで整合させてください。
例：AP_STATIC_IP=10.0.0.1/24 ↔ dhcp-range=10.0.0.50,10.0.0.150,255.255.255.0,12h。
かつ、上流 LAN とサブネットが衝突しないように設計してください（NAT する場合は別セグメント推奨）。

競合回避

他マネージャ（NetworkManager など）や STA 用フローと 同一インターフェースを奪い合わないようにしてください。
AP 専用 IF（例：wlanAP）を用意し、STA 側（wifi_or_ap）で同 IF を扱わない構成を推奨します。

トラブルシュート

  • APが立たない: hostapd -dd -f /tmp/hostapd.log で詳細確認
  • DHCP不通: dnsmasq --test / journalctl -u dnsmasq

セキュリティ注意

  • 初期 SSID/PSK はデプロイ後に変更推奨